~一章~

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学校の最寄駅に着いてバス停へと向かう。携帯を開けて時間を確認すると、バスが発車するまでにはもう少し時間がありこれなら・・・。と冬麻は久々に駅から学校まで歩こうとバス停を後にする。 いつもは遅刻ギリギリで歩いている余裕なんて全くと言っていい程ない冬麻は、物珍しい物を見る様な目で辺りをキョロキョロと見回していた。 そんな時、いきなり後ろから誰かに肩を叩かれて振り向けば、そこにはクラスで一番仲のいい有人が笑っていた。 「冬麻?珍しいな」 「あ、雅貴。おはよう」 「おう。今日は早いじゃん」 冬麻に人懐っこく明るい笑顔を見せるこの少年の名は阿木雅貴〈あぎまさたか〉。 冬麻よりは幾分か落ち着いた印象を与え、毛先の跳ねた髪と瞳はオレンジ色をしている。性格は至って活発で、部活のサッカー部では一年の頃からレギュラーで今では立派なエースと、運動神経抜群の〈モテ組〉というやつだ。 それでいて、勉強もそこそこに出来るという冬麻にない物をたくさん持っている人間だったりする。 そんな彼とは高校の入学式で出逢った。 冬麻の学校は中学から大学までのエスカレーター式で、高校は外部入学はそれなり な難関とされている。 冬麻は当然の如く中学からのエスカレーターだったが、雅貴は高校からの入学で入学式の日に式の執り行われた体育館で、目の前に座っていたのが雅貴だった。
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