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窓からそよぐ風が彼の髪を撫でた。
風が羨ましい。
切に羨ましい。
なぜ羨ましいのかといえば彼に触れたいからだ。
まさか脳内でこんな事を考えているなんて彼は想像だにしないだろう。
風は、彼の髪に触れ、小麦色の肌に触れ、どこかに行ってしまう。
もしくは消えた。
触り逃げなんてずるい。
そんなどうしようもない事を心の中で呟き、ミントは小さく息を漏らす。
一時でもいいから。
彼と談笑したい――。
彼に会う度、ミントはそう思うようになっていた。
それが、夢のまた夢であると解っていても。
何とも言葉にしがたい気持ちだった。
ミントは再び彼の横顔を見つめる。
彼は忙しなく動かしていた右手を止め、ようやく顔を上げた。
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