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ミントは窓から視線を変え、彼が先程まで向かっていた机を見つめる。
実際は、ぼんやりとして明瞭に映っていない。
首を正面に戻したら目線の先に机があったというだけだ。
ミントは毎日机の横で、質素な丸椅子に座り彼の横顔を眺めている。
嫌っ、ていうほど疎まれてはいないけど、彼の対応は冷めている。
言葉は交わすけれど、彼の会話は感情が篭っていない。
俗にいう脈なしという経過だ。
落胆なのかただの呼吸なのか自分でもよく解らない息を吐き、ミントは立ち上がった。
もう諦めようかとも思う。
最近ではそう思うようになってきた。
なってきたけど、きっとまた明日も来るんだろうな、と予測できてしまう自分に苦笑する。
でも、彼に会いたいから。
丸椅子からそっと離れようとして、誰かが扉をノックした。
二三度叩き、女の声。
「シオン様」
その声は控えめだけど、嬉しい事があった時のように弾んでいた。
彼――シオンは扉へ向かう。
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