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「お仕事のお邪魔してごめんなさい」
部屋に入るなり女は上品にそう言った。
「いや、今一段落して休憩してたとこだから」
シオンは片方の扉を全開にして女を中へ招く。
そう良かった、と言って女は微笑んだ。
パチ、と女と目が合う。
その瞬間、女の眉と眉の間に皺が寄ったのをミントは見逃さなかった。
「あら、またいらしたのですか。全く、どうしようもないですわね、あなたは」
お高く留まっているこの女は、今ミントがいる邸宅の当主の娘だ。
髪が縦ロールなので、初めて会った時も縦ロールだけは印象に残っていた。
「勝手に入ってきて、不法侵入罪で訴えますわよ」
「今、出ていきます」
潔くそう返したのは女が好きじゃないから。
同性のミントから見ても女は美しかった。言葉遣いや着ている衣装も育ちがいいのを物語っている。
けど、シオンの前じゃ猫を被っているから好きじゃない。
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