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「若菜、今まで何をして・・・」
「お帰りになってたのね、これ・・・」
嬉しそうに微笑んでいる若菜が差し出して来たのは、
「菖蒲・・・?」
「えぇ。・・・綺麗でしょう?三条の辺りの菖蒲畑に沢山咲いていたの。噂に聞いて、取りに行っていたのよ」
「ならば、私もついて行くというのに」
一人で行かなくとも、と言うと若菜はあら、だめよ。と笑った。
「あなたのお守りに、持って来たのだもの」
「お守り?」
「そう。花言葉は分からないけれど、いつも頑張っているあなたに、どうしても綺麗だという菖蒲をあげたかったの。喜んでくれたらと思って」
「若菜、」
「心配をかけてしまったのなら、ごめんなさい」
落ち込む若菜の目には、少し涙がたまっていて。
全く、と晴明は息を吐いた。
「お前の涙には、昔から弱い」
ふわっと抱きしめる。
「これからは、勝手に一人で出歩いてくれるな、」
「はい・・・」
「それから、」
ーー今度、その菖蒲畑を見に行くか?
そう耳元で囁くと、若菜はまた、嬉しそうに微笑んだ。
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