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ーー・・・ま、
さま・・・、
・・・・・・・・・、
「じい様っ、」
「・・・昌浩か、なんじゃ。わざわざ」
「わざわざじゃないですよ、じい様が来るように言ったんでしょう!」
どうも記憶が曖昧だ。
「勾陣、」
「なんだ、晴明」
呼びかければ、すぐに勾陣が顕現する。
「どのくらい、眠っておった?」
「・・・・・・大体、半刻ぐらいか、」
「そうか、」
珍しい事もあるものだ。
「じい様、ところで、どんな用が・・・」
「昌浩、」
「はい」
「お前、ちと笑ってみんか?」
「はい!?」
突然素っ頓狂な事を言われて、昌浩は驚いた声を上げる。
「じじじっ、じい様!?」
とうとう、ボケましたか!?それとも何かに当たりましたか!?と、かなり混乱し始めた昌浩に、物の怪の仲裁が入る。
それを、晴明は目を細めて見つめた。
なぁ、若菜。
菖蒲の守りより、
ーーあなた・・・
そう言って笑うお前が、
一番の、宝だったよ。
優しい風が、今だに混乱している昌浩や、微笑んでいる晴明を通り抜けた。
ーーあなた、綺麗でしょう?
菖蒲の香とともに、幸せな思い出を運んで。
【終】 →後書き
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