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雪が降り続いている。
一人の少女は、なじみの気配に気付いて、ふと目を覚ました。
「いたのなら、起こしてくれたらいいのに・・・紅蓮」
「まだ、寝ておけ」
紅葉は、ふふっと笑ってゆっくりと起き上がる。
それに気付いた紅蓮が、慌てて手を貸す。
「・・・ありがとう、紅蓮」
弱々しく笑えば、苦い顔をする紅蓮。
大人しく寝ていろ、と言いたいが言えないらしい。
「昌浩は、いないのね。珍しい」
自分の弟とこの神将は、ものごころつく前からずっと一緒だった。
「晴明のところだ。大方、妖の退治でも頼まれているんだろう」
「御祖父様、昌浩をいじるの好きみたいだから、昌浩、また怒ってるかもね」
ふふ、と笑う。
「・・・ねぇ、紅蓮・・・。雪が、降ってるの?」
「・・・あぁ、昨日からな」
「そう、道理で寒いと思った」
ふふ、と笑う紅葉はより、か細く、儚く見える。
「ねぇ、雪・・・見たいわ・・・」
ふと、そう言ってお願いと微笑む。
紅蓮はため息をついた。
「少しだけだぞ?」
「えぇ・・・」
この神将は、昔から紅葉のこの笑顔には逆らえないのだ。
紅葉の肩に単を羽織らせた紅蓮は、軽々と抱え、簾の前に腰掛ける。
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