新島 真

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「僕が?」 えぇ…と恨み屋。 静かに、むしろ音もなく伸ばされた恨み屋の手は彼の口許をさわる。 「いっ…!」 失礼と恨み屋は絆創膏を渡す。 また沈黙。 「恨み屋って何をするんですか?」 『あなたの恨みをいただき、それを代行します。』 彼は背筋が凍る思いをした。 恨み屋の声は丸で穏やかだが、言葉は抜き身の刀だった。 ただし…と続ける恨み屋。 『人を恨まば穴二つ… 対価をいただきます。』 「対価…?」 生唾を飲むことになる彼。 恨み屋は沈黙。 笑うかのようにランタンの炎が揺らめく。 『貴方の大切なものをいただきます。』 真っ暗の闇は彼を母のように心地よく包み込んでいた。 しかし、彼は冷や汗が止まらなかった。 …この人を信じていいのだろうか… しかし、確実な雰囲気がある。 まさに渡りに船だ。 だけど対価って… 散々迷って彼は口を開く。 「…お願いします。」 確かに…と恨み屋が呟く。 そうすると、強い風が恨み屋から吹き、目を開くとそこはただの袋小路。 煉瓦の壁、自分が座っているのは壊れかけの木箱。 最早首をかしげるしか出来なくなった彼は、静かに立ち上がり家路に就いた。
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