一章 多分救われない人達

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「あり。」 蟻じゃなくてあり。 あり? 「此処は何処だ……?」 記憶を探す。見つからない。 「ミク……あ。」 そうだ誘拐されちゃったんだっけ。 12年前の様に。 多分、ここは和室なんだろうけど…… 光が無いからわからない。 「いってーー…」 殴られたところが痛い。当たり前かもしれないが痛い。 「うわ。」血ぃ出てるよ。 あ。 血が出てるのを手で触って確認出来ることで、手は拘束されていないと気付く。 「……足は動かないな」 鉛玉の様に重い。 ……鉛玉? それさえもわからない。 「ゆーくんっ!!!」 光が入ってくる。眩しい。 「ミク……?」 何故かパジャマ姿のミク。 「可愛いー?」 「可愛いよ」 これは嘘じゃない。 ものすごい言い忘れてたけど、ミクはかなりの美少女だ。 で、昔は才色兼備で、叔父が大富豪の社長。 したがってミクも大富豪の孫。 だから、誘拐されて、戻ってきた時の記者は凄かった。 でも、ミクはその頃から壊れ始めたから、いつも無言だったけど。 僕も、記者が凄かった。 「ゆーくん?」 ふと我にかえる。 「どしたの?」 ミクは相変わらずパジャマ姿で僕の目前にいる。「なんでもないよ」 しかし眩しい。 ふと足元をみる。 うわー…。鉛玉。 動けない訳だ。 しかしどうにかしなければ。 「ミクちゃん」 ゆっくりとミクの頭に手を乗せる。 「ふにゃー」 猫科の音無深玖ちゃん。 「僕、もう帰らなきゃ」 ふっと何かが切れる。 僕にはわからない。 「えっ」 「み きゅ」ぐわ。 またぶん殴られた。 どうやら帰らせてくれないようだ。 あー。どうにかしなきゃな。
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