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「あり。」
蟻じゃなくてあり。
あり?
「此処は何処だ……?」
記憶を探す。見つからない。
「ミク……あ。」
そうだ誘拐されちゃったんだっけ。
12年前の様に。
多分、ここは和室なんだろうけど……
光が無いからわからない。
「いってーー…」
殴られたところが痛い。当たり前かもしれないが痛い。
「うわ。」血ぃ出てるよ。
あ。
血が出てるのを手で触って確認出来ることで、手は拘束されていないと気付く。
「……足は動かないな」
鉛玉の様に重い。
……鉛玉?
それさえもわからない。
「ゆーくんっ!!!」
光が入ってくる。眩しい。
「ミク……?」
何故かパジャマ姿のミク。
「可愛いー?」
「可愛いよ」
これは嘘じゃない。
ものすごい言い忘れてたけど、ミクはかなりの美少女だ。
で、昔は才色兼備で、叔父が大富豪の社長。
したがってミクも大富豪の孫。
だから、誘拐されて、戻ってきた時の記者は凄かった。
でも、ミクはその頃から壊れ始めたから、いつも無言だったけど。
僕も、記者が凄かった。
「ゆーくん?」
ふと我にかえる。
「どしたの?」
ミクは相変わらずパジャマ姿で僕の目前にいる。「なんでもないよ」
しかし眩しい。
ふと足元をみる。
うわー…。鉛玉。
動けない訳だ。
しかしどうにかしなければ。
「ミクちゃん」
ゆっくりとミクの頭に手を乗せる。
「ふにゃー」
猫科の音無深玖ちゃん。
「僕、もう帰らなきゃ」
ふっと何かが切れる。
僕にはわからない。
「えっ」
「み きゅ」ぐわ。
またぶん殴られた。
どうやら帰らせてくれないようだ。
あー。どうにかしなきゃな。
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