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「構わないよ、来る者も去る者も拒まないのが私」
何かが違った気がしたが、触れはしない。
彼女の隣に座る。
ふと、空気がズレた気がした。
「で、急にどうしたんだい、色彩の君」
空気のズレは初めて味わった安心感だと気づいた。
ついでにもうひとつ。
彼女は景色に溶けていた。
その故か、「色彩」とは良い喩えだと思った。
俺とは反対、多分性格もなんだろうな。
一呼吸の後に答えた。
「疲れたから。君と同じ」
目が合った。
彼女が微笑んだ。
目だけは不思議と輝いていた。
「うん、揃いだね。他はみなチガうのに。」
とん、と大げさに彼女が降りた。
軽く手を振り、また微笑んで去って行った。
彼女はすんなりと溶けてしまった。
俺は彼女を真似てみた。
本心に逆らって拒まなかった。
今日を最後にしたくないと、思った。
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