だって、好きだから。

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桜子とは別れて、黙々と電車を乗り継いで。 黄昏色の、静かな住宅地に入る。 里央と並んで、お家までのささやかなデート。 できるものならスキップだってしたいぐらいの気分なのに、里央は浮かない表情だ。 「翔が1人で外に居るのは、やっぱり心配なのだ……」 歩調までとぼとぼといった感じで、里央が呟く。 『どーして?』 里央ってば、過保護すぎだと思わない?? こんなにも送り迎えを渋る理由が、実はよくわからない。 幼稚園児でもないんだから、送り迎えは要りませんって言われるならともかく、里央の嫌がりポイントは、そこじゃないみたいだし。 「もし翔が捕まったり取り込まれたり御祓いされたりしたら大変なのだ」 至極真面目に、そんなことを言うらしい。 『まっさか』 そう簡単には捕まりませんぜ、お嬢さん。 第一オレなんかさらったところでなんの得があるんだか。 目の保養にしようにも、万人向けじゃないことだけは保障する。 取り合わないオレに、重い重いため息が一つ。もちろん、聞かせるためのわざとらしいヤツ。 「少しぐらい、自覚するのだ」 オレってば、そんなに危なっかしいかしら?? ささやかに思い悩むところへ。 「翔は、幽霊なんだから」 不貞腐れたような呟きが、ぽつりと。 黄昏色の夕闇に、呑まれて消えた。  
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