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改札をくぐって、ホームに上がると同時に電車も滑り込んでくる。
息を整える間にドアからたくさんの人が吐き出されて、整え切れない内に箱の中に飲み込まれる。
そんな里央にくっついて満員電車に乗り込むのにも、どうにか慣れてきた感じ。
オレはふわふわしてるだけだから、大変でもなんでもないんだけど。
上手いこと里央の正面に乗り込むのが、実はちょっと難しい。
ほら、たまにさ、誰も座ってない椅子が、ずっと残ってることってない?
満員電車のはずなのに、妙にスペースできてることって、ない?
あれってオレみたいのが、座ってたりもぐりこんでたりするからで。
人って何故か上手いこと、オレたちを避けてくれるから。
里央の前に乗り込めば、少しだけスペースを提供してあげられることもあるんだよね。
上手く行けば、だけど。
コツは里央にコアラみたいにつかまって、一緒に乗ってもらうこと。
そうすればじたばた暴れなくても、里央の正面ばっちりキープ。
こんなにぎっちり人が居る場所じゃ、会話なんてもちろんできっこないんだけど。
もしもオレが生きてたら、こんな風に一緒に学校行ったのかなとか思ってみると、くすぐったいような、切ないようなだ。
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