アンタなんかに負けねぇし。

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今日もいつも通り、かろうじてセーフな時間に校門に滑り込めると、思った途端。 「桐咲さん!!」 なにやら切羽詰った呼びかけに、里央がぴたりと足を止めた。 そう言えば、桐咲は里央の苗字だったと思いつく。 ほとんど同時に振り向いて、オレはふわりと宙に浮いた。 前を向いてる人間の視界には入らないぐらいの高さを、くるりと泳ぐ。 実はこんな芸当も出来るのよ? 自分で気分悪くなるから、滅多に使ったりしないんだけど。 ほら、あんまりに人間離れしすぎてて、ちょっと悲しくなるじゃない。 だけどまぁ、告白タイムの邪魔なんて、悪趣味な真似はなしってコトにしといてあげる。 ふわふわ宙を漂いながら、耳だけはばっちり2人に傾けた。 目では里央を呼び止めてくれちゃった少年を観察する。 やっぱ、邪魔してやろうかな……。 なぁんの事情も知らないギャラリーたちから、お似合いだとかなんだとか、囃されそうな感じがしゃくに障る。 絵になる2人だと、オレまで思った。 色白で小柄。小生意気な猫みたいな瞳は、そのくせ犬みたいに人懐っこい。 要するに人目を惹くのに困らないぐらいにはキュートで、甘え上手な雰囲気で、下手すりゃキャラ被りそう……。 気付かれないのは承知の上で、頭上から必死にガンを飛ばしてやった。 里央のヤツ。 今ごろ可愛い可愛いにやけたいの、必死に堪えて真面目なフリしてるはずなんだ。  
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