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ぽろぽろと、澄んだ瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
「え……、ごめ、なさ……っ」
彼自身が、一番動揺してるみたい。涙を堪えるために、必死に歯を食いしばろうとする。
学ランの袖でぐしゃぐしゃと顔を拭う彼を、里央はぐっと抱き寄せた。
ドンと拳で殴りつけられたような、鈍い衝撃。
だけどそれは、心のどこかで、わかってた光景だった。
だって里央は、そういう子だから。
それが里央の、優しさの差し出し方だから。
わかってても、信じていても、それでも胸は、痛いんだった。
焦燥とか、苛立ちとか、悔しさとか、虚しさとか。
ドロドロとした感情がうるさいぐらいに渦巻いて、どうにかなってしまいそう。
だからオレは、必死で自分を誤魔化した。
里央が愛してるのはオレだろう?
だったらそれでいいじゃない。
納得しろよっ!!聞き分けろっ!!
どうして胸が、こんなに痛いの。
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