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「泣けてくるほど好いてもらえて、嬉しいぞ。ごめんな。でも、ありがとう」
ガチガチに肩を強張らせていた力が抜けて、彼はふぇと嗚咽を漏らした。
涙がセーラーの襟を濡らすのも、遅刻を告げるチャイムが鳴るのも、これっぽっちも気にかけずに、里央はヤツを抱きしめてた。
ヤツの嗚咽が少しずつ落ち着き始めた頃、里央はまっすぐ、オレを見た。
後ろ暗さなんて微塵もない、オレが許すことを信じきってる瞳。
オレの中のどす黒い感情の束を、あっさり浄化させてしまう。
あぁもう、ほんと里央には、敵わない。
苦笑は、自然と零れた。
いいよ里央。
里央は自由に、生きればいい。
したいことを、すればいい。
したいように、選べばいい。
どんな里央も、愛しててあげるから。
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