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「ありがとう、ございました……」
泣き止んだ彼は、くすんと鼻をすすりながら、面映く微笑む。
出来損ないの笑顔だったけど、たぶんそれが、今のコイツには上出来ってヤツで。
よしと1つ頷いて、里央は優しく彼の頭を撫ぜた。
「オレ、ずっと諦めようと思ってました」
叶わないことはわかっていたのだと、遠くを見るように切なく笑う。
「だけど、桐咲さんのこと、好きなまんまでいいですか??」
澄んだ瞳が、まっすぐに里央を射る。
それはどこか、前向きな問いかけ。
いつか区切りをつけるから、それまでは、許していて欲しいと。
そして里央は、見守るような眼差しで、微笑んで魅せた。
「キミの心はキミが決めるのだ。人を好きでいることを、あたしがダメだと言う権利はない」
ほんと、オトコ前だよね。
可愛いくせに、どうしてそんな強いわけ?
自分があまりにちっちゃくて、悔しくなってきちゃうじゃない。
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