アンタなんかに負けねぇし。

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―――キンコンカンコーン キンコンカンコン。 授業開始の、合図が鳴った。 「あっ、すみませんっ!!」 ヤツはそこで初めて、自分たちが盛大な遅刻をやらかしていることに気付いたらしかった。 青くなったヤツに、里央は優しい微苦笑だ。 「構わないのだ。遅刻ぐらい、大したことじゃないのだ」 あっさりと吐き出しておいて、ふと気付いたように言葉を漏らす。 「そうだ、名前は?」 「はい??」 「キミの名前、知らないのだ」 ヤツの反応にオレは、だろうなと、1人笑った。 だって、きょとんと、不思議そうに里央を見たから。 こんだけ可愛い顔してるなら、絶対うわさになってるはずなんだ。 何組の誰が可愛い、みたいな。 たて襟のバッチが2年ってことは、学年も里央と一緒だし。 自分のこと、本気で知らないヤツが居るなんて、思ってもみなかったんだろう。 きょとんとしてから、ヤツは笑った。 泣き笑いみたいな表情はどこか晴れ晴れとしていて、オレも人心地ついた気分。 里央のフり方、どうあっても友達以上はありえなくて、友達だからこそ泣きたいときには胸を貸しもするっていうぶっ飛んだ荒療治的な、その分逆にきっぱりと一線引いてしまった対応が、アタリだったことを悟る。 そして、ヤツは名乗った。 さっぱりとした、人懐っこい微笑で。 宮 千祐(みや ちひろ)です、と。  
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