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「珍しいね。里央ちゃんがケガなんて」
やたらと綺麗な顔をした保健室の先生が、血の滲むひざこぞうに消毒をして、ガーゼを当てる。
「ちょっと、張り切りすぎたのだ」
ウソ。
オレが気になって、集中できなかったんだ。
授業中も里央にくっつきはじめて、1日目。
体育の授業で、里央がケガをした。
ケガって言っても膝の擦り傷1つで、大騒ぎするようなもんでもないんだけど。
オレのせいって言うのが、すげぇ痛い。
「はい、おしまい」
しゅるしゅると手際よく包帯を巻き終えて、保健の先生は励ますように微笑んだ。
「真琴せんせ、ありがとうございましたなのだ」
「いいえ、どういたしまして」
そして不意に、微苦笑って感じに表情を崩して。
「そんなに泣きそうな顔しないで?」
それは明らかに、オレに向けられた言葉だった。
「ちょっとの間はしみるけど、すぐに痕も残らず治るから」
だから悲しい顔はしないでと、性別不詳な校医が優しく囁く。
『マジで!?』
思わず問い返してしまったオレへのしっかりとした頷きは、ヤツも見える人間だってコトの、これ以上ない証明になった。
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