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2メートルぐらい歩いたところで、里央が不意に足を止めた。
『里央??』
「逃げるのだ……」
押し殺したか細い声が、切羽詰った本気な感じ。
苦しい顔で見つめる先が、巫浄なのだとぴんと来た。
だけど、遅い。
巫浄の冷たい目はしっかりと、オレの姿を捉えてしまっていたから。
蠱惑的な漆黒の眼差しに吸い込まれて、何も、考えられなくなりそう。
オレを絡めとって、底のない深淵へと引きずり込もうとするような、引力。
そんな力を断ち切るように、オレたちの間に突然に割って入ったものがある。
里央が、オレの前に立ちふさがってた。
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