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動けよと呪っても、縫い止められたみたいに指1本動かせなかった。
瞬きすら出来ずに、ひたすらに里央の背中を見つめてる。
「……ソレは、お前のか。桐咲」
カツリ・カツリとやけにもったいぶった足音を伴って、低く耳をくすぐるような、威圧的な声が近づいてくるのがわかる。
「そう、なのだ」
緊張で固い声が、喉に引っかかったみたいに震えた。
巫浄は多分、もうすぐそこ。
ねぇ、なんでオレは。里央に庇われて、突っ立ってるしか出来ないの。
もどかしさに、気が変になりそうだ。
頼むよ、動けよこのポンコツっ!!
幽霊が金縛りなんて、そんなの情けなさすぎるじゃない。
どれだけ必死になってみても、ダメ。
「最近小物がやたらと校内をうろついていると思っていたが、ソレか」
ぞっとするぐらいに、温度のない声だった。
底なしに冷たい闇色の瞳に、里央が1人で立ち向かってる。
なのにオレは、身じろぎすらもままならなくて。
里央を守らなきゃならないはずなのに、どうしてオレは。
どうしょうもなく、無力なの。
「翔を、消すのだ……??」
ビリビリと張り詰めた問いかけを、里央がしぼみそうに放った刹那。
ガラリと後ろで、音がした。
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