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「ダメだよ、きいちゃん」
穏やかなのは、見せ掛けだけだ。
こんなにも冷たく凪いだ真琴の声を、オレは知らない。
底に潜む芯の強さと、威しつけるような黒い苛立ち。
「翔くんに何かしたら、ボクも許してあげないからね」
絶対者の託宣めいた死刑宣告。
真琴の言葉には、それだけの威力があって。
つかつかと距離を詰めてきた真琴が、里央までもを守るようにオレたちの前に立ちはだかる。
見方を変えれば、巫浄の前に。
おそらく、数瞬の視線の交錯。
その延々とも感じ取れる刹那の時間で、勝敗は決した。
不意に身体が軽くなる。飲み込むようだった圧力が、一瞬にして消えた。
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