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自由になって、初めて気付く。
なんて。
なんて大きな圧力だったのだろう。
なんて、張り詰めた空気を作る男。
里央が、ようやく詰めていた息を吐いた。
『里央っ!?』
ぺたりと糸が切れたみたいに膝を付いた里央は、それでも目を細めた。
「翔も、大丈夫なのだ?」
オレが無事でよかったと、安心しきった瞳をして。
オレを守ろうと、この大きな男に立ち向かってくれた女の子。
脅威に1人、身をさらしてくれた愛しい人。
たまらなく愛しくて、里央の身体を包み込んだ。
抱きしめていたいんだってことを、伝えたくて。
感謝と愛情を、受け取って欲しくて。
オレを消し去ろうとしていたはずの脅威は今、あっさりと真琴の前に膝を折り。
真琴に対して、オレたちの安寧を誓った。
ここ数週間に及んだ緊張はもはや必要のないもので、だから。
里央は本当に、とても幸福そうに、笑った。
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