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「わざわざ散らさずとも、先は長くあるまい」
思わず、息を詰めた。
なんの重さも持たない一言。
天気の話しでもするみたく、何気なく呟かれた言葉。
それが再び、空気に重苦しい重力を与えた。
むしろ一瞬にして、場の空気を凍りつかせた。
ほっとしたのなんて、つかの間で。
哀しいぐらい、一瞬で。
「え……?」
千切れそうなか細い声は、里央の喉から零れ落ちて。
真琴が、きつく拳を握ったのが目の端に映った。
あぁ、知ってたんだ。
知ってて、庇ってくれたんだ。
最初から。
知ってて、里央には言わずに、いてくれたんだ。
ほんといいやつだね、真琴。
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