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「ヤダっ、いやなのだっ…。やだやだやだぁ、いやだ翔、いやなのだっ」
泣き喚く里央を抱きしめてやることどころか。
抱き縋らせてやることすら、出来ない。
オレを掴まえようと伸ばされる手はどうしょうもなく空を掻いて、必死な指先はオレに触れることも出来ずにもがくように握り締める動作を繰り返す。
息が出来なくなったみたいに、浅い呼吸を繰り返して。
それでも里央は、オレの名を呼ぶ。
水中で溺れた、人魚みたいだ。
ごめん、ごめん里央。
苦しくてオレも、息が出来ない。
パニックに過呼吸状態で手の付けられなくなった里央を、真琴が巫浄と一緒に保健室に引っ張り込んで。
どこからか取り出した鎮静剤を注射すると、まるでなにかの魔法みたいに、里央はぱたりと眠り込んだ。
その青褪めた表情が、苦しくて。
オレはしてはならない失敗をやらかしていたことに、気付かざるをえなかった。
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