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「なんでこうデリカシーないかなぁ」
半分以上が本気の苦情に、そういう作りらしい不機嫌そうな顔のシワが尚のこと深くなる。
「気付いていると思っていた」
「見えるだけでそこまでわかるわけないじゃない」
いつも優しい真琴が、つけつけと手厳しく物を言う。
それがかえって、2人の距離の近さをうかがわせた。
「翔くんだって、一生懸命隠してたのに」
真っ白だった頭に、真琴の聴く者を落ち着かせる声が滑り込んできて。
ねえ?と優しい眼差しを向けられて、なんだか涙腺がゆるくなる感じ。
孤立無援の四面楚歌が実は、見守ってくれてる誰かのエール付きだったっていうのは、泣けてくるぐらいに温かい。
真琴の温かい眼差しに見つめられているうちに、糸がぷつりと、切れてしまった。
『オレ、どーしよぉ……?』
呟きはどうしようもなく震えて、オレはこの身体になって初めて、涙と呼べるものを零したんだった。
『里央、りおが……』
錯乱した里央の様子が幾重にもフラッシュバックして。
『オレ、オレ……』
どうしたら、里央を救ってあげられるの。
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