隠し事は、上手くは行かない。

22/31

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/96ページ
真琴がオレを抱きしめた。 なんだかとても温かいような気がして、余計に涙が止まらない。 「翔くんは、頑張ったじゃない」 甘い声音に、撫でられる。 「里央ちゃんのこと悲しませないようにって、1人で頑張ってきたんじゃない。 消えちゃうの、怖いでしょ? なのにそんなのこれっぽっちも見せないで、里央ちゃんが笑ってられるようにって、ちゃんと守ってきたじゃない」 言われて初めて。 オレの心が、どれだけガチガチに凝り固まって、ささくれ立っていたのかを、知った。 いつかの千祐みたいに、真琴の腕で泣きじゃくって。 真琴の何もかもを包み込むような声音と指先に、慰められた。 「里央ちゃんは、大丈夫だよ」 あったかな、囁き。 「里央ちゃんは、強いから。きっと一緒に指を、折ってくれるよ?」 残りの時間を、一緒に数えていてくれると、そう優しく教えられて。 胸いっぱいにこんがらがってた糸が解けて、春みたいに穏やかな光が、差した。  
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加