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真琴がオレを抱きしめた。
なんだかとても温かいような気がして、余計に涙が止まらない。
「翔くんは、頑張ったじゃない」
甘い声音に、撫でられる。
「里央ちゃんのこと悲しませないようにって、1人で頑張ってきたんじゃない。
消えちゃうの、怖いでしょ?
なのにそんなのこれっぽっちも見せないで、里央ちゃんが笑ってられるようにって、ちゃんと守ってきたじゃない」
言われて初めて。
オレの心が、どれだけガチガチに凝り固まって、ささくれ立っていたのかを、知った。
いつかの千祐みたいに、真琴の腕で泣きじゃくって。
真琴の何もかもを包み込むような声音と指先に、慰められた。
「里央ちゃんは、大丈夫だよ」
あったかな、囁き。
「里央ちゃんは、強いから。きっと一緒に指を、折ってくれるよ?」
残りの時間を、一緒に数えていてくれると、そう優しく教えられて。
胸いっぱいにこんがらがってた糸が解けて、春みたいに穏やかな光が、差した。
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