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泣いて慰められて、すっきりして、オレは巫浄と向かいあった。
一言、言ってやりたいことがあったから。
『ねぇ』
「……なんだ」
幽霊と会話なんてしてることがそもそもあり得ないのか、巫浄は酷く落ち着かなさげ。
『ありがとね』
「なに……?」
巫浄が訝しげに眉根を寄せて、真琴が微かに目を見開く。
コイツのしかめっ面以外の表情、里央に見せてやりたかったな。
里央ならきっと、一緒になって面白がってくれたはず。
想像に目を細めてから、しっかりと巫浄を見やった。
『だって踏ん切り、つかなかったんだもん。どうしても里央には、バイバイだよって、言えなくて』
サヨナラまでを、指折り怯えて過ごすのと。
朝目覚めたら、ひとりぼっちになっているのと。
どっちが苦しいかなんて、オレには判断できなくて。
『いつまでも言えないまんまなんてずるいこと、しちゃうとこだった』
だから、ありがとう。
サヨナラが近いことをちゃんと、伝えさせてくれて。
『アンタがバラしてくれたから。心の準備をする時間、里央に用意してあげられそう』
真琴が言ってくれた通り、里央は、一緒に指を折ってくれるはずだ。
いきなり消えてしまったオレを責めることも出来ないまんま、気付けなかったと自分を責めて、1人消えて逝ったオレを思って、また責めて。
里央にとってはそのほうが、たぶんずっと、辛いはず。
だからきっと、これでいい。
話して楽になりたかったオレのエゴでしかないかもしれないけど、これでいいんだって、オレはそう信じることにした。
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