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『里央!?』
巫浄と真琴の上を飛び越えて、ついたての向こうへ滑り込む。
ベッドの上でぐったりと薄く瞼を持ち上げた里央の瞳は、今にも涙が溢れそうで。
「や、なのだ……」
寝起きの、掠れた声がする。
「居なくならないで欲しいのだ」
切ない、願いだ。
叶えてやりたくてたまらないのに、どうすることも出来ない、願い。
『オレも、里央の傍に居たいよ』
ちっぽけな誓いが、一体なにになるだろう。
あんまりにも、オレは無力だ。
ぽろりと、澄んだ雫が頬を滑る。
持ち直したはずの心が、もう折れてしまいそう。
ピアノ線で胸をギリギリ締め上げられてる感じ。
切なくて苦しくて、やるせなくて。
いっそ夢なら、よかったのかな。
全部が全部、最初からまやかしで。
目覚めたら、あっさり褪めてしまう夢。
そしたら里央は、こんなにも傷つかずに済んだんじゃない?
これからも、傷つかずに居られるじゃない。
そもそも、オレが。
諦め悪くこの世なんかに、居座ったりしなければ。
悔恨は無意味で、そして愚かだ。
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