隠し事は、上手くは行かない。

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笑おうと、誓った。 痛いぐらいに強い、気丈な女の子のために。 笑っていようと、心に決めた。 『里央、聴いて?』 里央が頷くのにあわせて、長い髪が白いカバーの上を流れた。 『オレって、すっごく可愛いじゃない?』 里央のキュートな泣き笑い。 『だから、ショタコンの神さまに目ぇ付けられちゃって』 ごめんね、最初に、オレの口から言えなくて。 酸素を吸い込む、ワンテンポ。 『オレ、近い内に消えちゃうみたい』 ビクリと微かに、里央が震えた。 ゆっくりと、力んでしまった肩の力を抜いて。 「神さまが相手でも、浮気したら赦さないのだ」 里央なりの、軽口。 『オレだって、おっさんよりは里央がいいもの』 「なんなのだ、それ」 ぷくりと可愛く里央がむくれた。 『神さまがむちゃくちゃな美人でも、超絶プリティな女の子でも、里央じゃないならオレは要らない』 額にそっと、唇を落とす。 オレなりの、誓いの証。 『天国で、待ってるから』 里央がはっと、目を見開く。 『しわくちゃのおばあちゃんになっても、里央を見つける』 だから。 『ズルっこして、追いかけてきたりしたら知らないんだからね』 いつまででも、待ってると誓うから。 だからお願い、命を絶ったり、しないでね。 『お空の上から里央のことずっと見てるから、ずるしたらちゃんとわかるんだから』 里央の薄茶色の瞳が、涙を堪えきれずに揺れる。 『天国で、結婚しよーね』 涙でぐしゃぐしゃになってる里央と、小指を絡めた。 約束の、証。  
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