だって、好きだから。

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背筋のすっと伸びた、里央の背中。歩くのにあわせて、綺麗なチョコレート色の髪が揺れる。 こうして視界に居てくれるだけで幸せなんだって言ったら、大げさだって笑う? だけどほんとに、幸せって、想うんだよ。 女の子と歩くとき、里央のペースはゆっくりになる。歩調は女の子にあわせることって言うエスコートの基本を、きっちり守るつもりらしい。 もちろん車道側を歩くから、自然オレまで車の音に耳を澄ますことになる。 里央は口をつぐんでいて、桜子も里央の気分に合わせて何も口にしないから、周囲の会話だけがぽそぽそと聞こえてくる、そんな静けさ。 夕暮れ時の風が、だいぶ冷たくなってるみたい。 里央がぐっと拳を握って、寒さをやり過ごそうとしてる。 桜子の指先も真っ赤だ。 校門を出てしばらく歩く内に、同じ方向に向かう生徒たちが上手い具合にバラけてきて。 なんだか少し孤立したみたいな、静かな空間に取り残される。 そこで里央は、やっとオレの名を呼んだ。  
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