隠し事は、上手くは行かない。

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「里央ちゃん、もう起きられる??」 そっと真琴が覗き込みに来て、真琴の淡い瞳の中で、里央はぽうと頬を染めた。 どうして自分がベッドの上なのか、その前は何をしてたのか、はっきり思い出しちゃったみたい。 取り乱して手を煩わせちゃったのが、恥ずかしいんだね。 「ご、ごめんなさいなのだっ!!」 あたふた必死な里央の様子に、ため息が漏れる。 この子は、なんで謝ってるんだろう。 あんな切羽詰った状況で冷静に周りの大人に気なんかつかえてたら、可愛くないでしょ? それは真琴にも共通した思いだったらしくて、この子はほんとにって感じの微苦笑。 「謝っちゃダメだよ里央ちゃん。里央ちゃんのそういうとこ、好きだけど良くないよ? 里央ちゃんは自分で思うほどには人に迷惑かけてないんだから、たまには頼ってくれないと。 里央ちゃんが取り乱してくれたとき、実は嬉しかったんだけどな?」 にっこりと、真琴は春の陽だまりみたいに目を細める。 里央の心が、これ以上に負担を抱え込まないように、優しいだけの言葉選び。 手を焼かせてもらえて嬉しかったなんて、そうそう言えるもんじゃない。  
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