砂時計の砂は落ちる。

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「透明なのだ」 静かな声が告げた言葉を、オレは上手く飲み込めなくて。 『とーめー??』 「翔、透けてしまっているのだ」 とっさに見やったオレの手は、ぼやけた像を結んでいた。 その時初めて実感した。 消えてしまう、恐怖。 跡形もなく、散ってしまう恐ろしさ。 生きたまま少しずつ呑み込まれて行くような、底の見えない。 だけどオレは、狂ってしまいそうな恐怖に負けるわけには行かなかった。 だって、里央が居るから。 カタカタと震えてしまう指先を、拳を握りこんで黙らせて。 『お願い』 搾り出した声は震えていたけど、音になったなら、上出来。 『もうしばらく、こうしてて』 里央に包んでもらえてなかったら、今すぐにでも霧散してしまいそうで。 たまらなく、怖かった。  
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