砂時計の砂は落ちる。

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「クリスマスだ」 巫浄が、やたらと似合わない言葉を口にした。 「月が、一番遠くなる」 そういうことかと、オレは思った。 幽霊(オレたち)みたいな陰の存在にとって、月っていうのは結構大事で。 狼男が満月に力をもらう。遠ざかってしまう月は、それとは反対の効果があって。 満月で力を使い果たしたお月様が徐々に衰えて、その上遠ざかって。限界まで陰の力が弱ってしまえば、きっとオレも消えてしまう。 「お前の期限は、それまでだ」 次に来ることを、予期した通りの淡々としたセリフ。 真琴も異議を唱えたなかったから、きっとその通りなんだろう。 冷ややかな言葉は、かえって巫浄の優しさだった。 今なら、それがわかる。 『じゃあ里央、デートしよっか』 クリスマスに、2人で。 湿っぽいのはいやだから、一緒に思い切り笑おう。 最近のオレたちってば、涙が多かったから。 最後くらいは、笑って迎えよう? 『遊園地にでも、行こうか、里央』  
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