16人が本棚に入れています
本棚に追加
遊園地の入り口からほんのちょっと離れた場所に、見慣れた顔ぶれがずらり。
今日と言う日は、オレたちへのクリスマスプレゼント。
里央はと言えば、朝からずっと緊張がほぐれない。
センスはあるのに服装に頓着しない里央に、桜子というスタイリストが今日限定でくっついた。
白のふわふわタートルネックに、黒のハーフパンツと同色のニーハイソックスにブーツ。その上にボックスチェックのロングコートで、普段とずいぶん違ったイメージ。
服装がややボーイッシュな分、普段なら絶対にしないメイクまでうっすらと施されて、ただでさえ可愛い里央が尚のこと華やいで、別人みたいに見える。
そんな風に愛らしく、特別に飾り立てられた里央だから、緊張でガチガチの冴えない表情じゃもったいない。
『ねぇ里央』
呼びかけに向けられる視線の動きまでぎこちない。
『目ぇつぶって、深呼吸して』
「え??」
きょとんとする里央に微笑んだ。
『これから楽しいコト、しに行くんでしょ?怖いこと、なんもないよ??
そんなにかたくなってたら、なんも楽しくないじゃない。里央が楽しくなかったら、オレも嬉しくないじゃない』
だから、リラックス。
悲しい気持ちで今日と言う日を終えないで。
そんな願いが届いたのか、里央がゆっくり目を閉じた。
深い呼吸を繰り返す内に、里央の中で少しずつ、覚悟が固まっていくのがわかった。
再び目を開けた里央は、だいぶ肩の力が抜けていた。
「もう大丈夫、なのだ」
自身に確かめるように伝えてきた里央の、穏やかな微笑み。
『なら、よかった』
最初のコメントを投稿しよう!