さよならは言わない。

6/25
前へ
/96ページ
次へ
『そんじゃ、お願いします。一思いにやっちゃって』 巫浄が頷いて、千祐も表情を改めて。 里央がほんの少しだけ、泣き出しそうな表情をしたから、大丈夫だよと笑ってみせた。 千祐と、向き合う。 傍らの巫浄が、歌うように音の列を紡ぎだす。 梵字みたいなのがくるくる躍りだして、なんて楽しい効果はないんだけど、何かが腰の辺りを取り巻いてる感触。 引きずられるような、突き飛ばされるような、やな感じ。 光の中を超高速で突っ切るような、底のない闇にふわふわ頼りなく落下するような、見てるモノが白なのか黒なのかよくわかんなくって、根底から崩される感じ。 ちぎれちゃう、砂みたいに散っちゃいそう。 里央、またすぐに逢えるよね? 世界がぼやけて、意識がトんだ―――。    
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加