さよならは言わない。

7/25
前へ
/96ページ
次へ
見える世界に千祐が居なくて、左側に居たはずの巫浄が右側に居て、里央の横顔もなんだか向きが違う感じ。 「翔??」 不安げな呼びかけが、心持ち普段よりクリア。 「なぁに、里央。ひょっとしてこれって、成功してる??」 見開かれた里央の目に、うっすらと溜まった雫が、きっと答え。 「アンタ、やるね」 当然だろうって澄ました顔が、やっぱりいけ好かない感じ。 だけど今日ばっかりは、そんなアンタもカッコイイよ。 「里央」 ふらふらと誘われるように近づいてくる、里央との距離が近くなる。 向き直って、伸ばした手が届くぐらいの距離。そっと両手を、里央の細い肩に触れさせた。 あぁ確かに、感触ってこんなモンだった。 はっきりと、押し返される。 温もりや、形がわかる。 触ってるって、しっかり感じる。 なんだか天国で、幸せな夢を見せてもらってるみたい。 だけど里央の方がよっぽど、甘い夢の中にいる感じ。 瞳がとろんとして、表情だってほわ~っとして。 嬉しいの?里央。だったら、オレも嬉しい。 しばらくそうやって、バカみたいに見詰め合って。    
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加