だって、好きだから。

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導くように桜子の手を引いて、里央が手近な脇道にそれた。 多分桜子にも、そう話をつけてたんだろう。なんにも言わずに、里央に身を任せてる。 駅に向かう無秩序な列から離れてしばらく行くと、不意にプリーツの裾がふわり広がって、静かにしぼんだ。長い髪も、さらりと流れる。 踵を返した里央と、向かい合う。 「迎えになんて来なくても、まっすぐお家に帰るのだ」 きゅっと腰に手を当てて、薄茶の瞳がオレを射た。 「学校に居るのなんてちょっとの間だけなのに、どうして待ってられないのだ?」 里央の言うことは一々正論で、下校に掛かる1時間未満も惜しいだなんていくらなんでもちょっと異常だって自覚ぐらいあって、でもだからって、そうですよねと引き下がるわけには行かないんだった。 だって、心が焦るから。 離れてちゃいけないって、少しでも傍に行かなきゃって、どうしょうもなく求めるから。 『それでも里央と、一緒に居たくて』 今のオレに出来る種明かしは、ここまで。 心の準備が、出来なくて。 里央にはまだ、話せない。 「……翔」 そして、ちゃんとわかってる。 こういうオレの物言いが。 「どうしたのだ……??最近ちょっとおかしいのだ」 里央に、不安を与えてるってこと。 でも、だけど。 今はまだ、ゴメンナサイ。  
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