さよならは言わない。

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どっかで聞いた古い歌のように、涙を堪えようと空を仰いだ。 実際に存在しているよりも、きっとはるかにたくさんの星が輝いて見えた。 涙でゆがんで、視界いっぱいにキラキラが広がる。 涙腺だけが、やけに熱い。 ちゃんと、笑わなきゃ。 可愛いオレをプレゼントしたげなきゃ、里央はどんなオレを思い出せばいいの? 里央の中に残るオレが、情けなく泣きじゃくってる姿なんて、そんなの絶対いやじゃない。 どうせならとびっきりプリティでキュートな、最高の笑顔を。 そしたら里央がオレを思い出すとき、少しぐらい笑顔になれるかもしれないじゃない。 優しい記憶はきっと、痛かったり残酷だったりする記憶より、もっとずっとすんなり消えてくれそうでしょう? 里央が、満足して。 もういいやって、諦めて。 どっかの誰かとめぐり合って、最高にハッピーでナイスなカップルになって、オレに負けないくらいにキュートな赤ちゃんを作って、そんな風に。 前に進めるように、サヨナラしてあげなきゃじゃない。  
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