さよならは言わない。

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唇をそっと頬に押し付けた。 掬い取った涙の粒はしょっぱくて、なんかちょっとキザなことしてるけど、夢がまた一つ、叶えられた。 「里央の涙を拭ってあげるの、密かなオレの夢だったんだよね」 触れなかったからね。 それに里央、全然泣かない子だもんね。 最近は、たくさんの涙を、流させてしまったけれど。 軽口にやっと、里央が笑った。 100%には程遠い、出来損ないの笑顔だったけど。 「あたしは、泣かないのだ」 可愛い、強がり。 涙で、顔中ぐちゃぐちゃなくせに。 「幸せに、なってね」 世界中の誰よりも、幸せになってね。 幽霊のオレなんかに恋してくれた、可愛くて優しくてカッコイイ女の子。 「難しいこと、言わないで欲しいのだ」 「嬉しいこと、言ってくれるね」 オレが居なきゃ幸せになんかなれないなんて、とびきりの口説き文句じゃない? 「幸せに、なってよ里央」 お願い。 抱き寄せて囁くと、また涙が溢れた。  
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