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(蘭華様、いったいどちらへ……)
いくら市へ行くからといって目立たない格好をしているとはいえ、立ち振る舞いが一般人とまるで違う。
見つけようと思えば難しいことではないだろう。
(それよりも……)
花蕾は溜め息をついて立ち止まる。
すぐ後ろでも足を止めた気配がする。
(やっぱりつけられていたわね……)
このまま蘭華様の元へと戻ったら、蘭華様に危険が及ぶかもしれない。
はたして話の通じるような相手なのか……
「おい、姐ちゃん。」
体格のいい男が花蕾の腕を引いた。
「離してください。」
花蕾はそう言って相手を見る。
(……すっごい筋肉。
もしかして脳みそまで筋肉になってるんじゃないでしょうね……)
男は値踏みをするように、上から下までじろじろと花蕾を見る。
どうやら話の通じるような人ではなかったらしい。
男とはかなりの体格差がある。
逃げるのなら彼が油断している今しかないだろう。
「やあっ!」
かけ声と共に男の腹部に蹴りを入れる。
――と、花蕾は一目散に駆け出した。
その後ろ姿を見送る瞳がふたつ。
「「……アレガ、アルジノ……」」
獣のような唸りで呟いて、
金の瞳は姿を消した。
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