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気がつくと花蕾は薄暗い部屋の中に居た。
辺りを見回すと、1人の少年と目があった。
男の人……と云うには小柄で細い。だから少年。
この人がさっき助けてくれた人なのだろう。
男を倒して、動けなくなった自分をここまで引っ張って……。
お礼をしなければ。
と、少年の元へと花蕾は歩み寄った。
「……あの、」
「……気絶しながら走るとは…なかなか器用な女だ。」
予想よりも低い……男性らしい声が返ってきた。
立ち上がって並ぶと彼の方が少し身長が高い。
……もしかしたら年上かもしれない。
なんてことは今はどうでも善くて、
今は何よりあの人を嘲ったような物言いが気に入らない!
「ちょっと、何が言い…」
たいのよ。と続けるはずが、青年の深緑の瞳に見つめられて気まずくなってしまった。
なんとはなしに目を逸らすと、綺麗な黒髪が目に入った。
綺麗な人だな……
と、素直に思ってしまう。
そういえばとまだ名前も訊いていないことに思い至る。
「助けてくれてありがとうございます。
……名前、訊いてもいいですか。
私は朱花蕾です。」
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