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「まぁ!花蕾。
この鳥は何て名前なのかしら?」
いつも呆れながらもきちんと答えてくれる。
……はずなのに、返事がない。
「ねぇ……花蕾ったら、あら?」
振り返った蘭華はようやく気がつく。
侍女とはぐれてしまったということに。
「どうやらわたくし、迷子のようですのね……。」
まるで人事のように蘭華は呟いた。
必ず花蕾は見つけてくれる。
そう確信があるから、不安はない。
ただ、どうやって時間を潰そうか……
ふと、目の端に1人の野菜売りの少年の人懐っこそうな横顔が映った。
「もし、そこの方。」
蘭華が話しかけると、少年は振り返り、飛びっきりの笑顔を向けた。
「いらっしゃい!お嬢さん。
今日は人参が安いよ……って、あれ?
見ない顔ですね、お客さん。
この辺に来たのは初めて?」
人とはぐれてしまったのだと正直に告げる。
すると少年は何か考えるように頬を掻いてから、
「しょうがないですね。
ちょうど今日はもう切り上げようかと思っていたところですし。
一緒に探しましょうか。」
と言った。
「僕は青金鳥。
みんなはシンって呼ぶ。
よろしくね。」
「シン様ですわね?
ではわたくしの事はランとお呼びくださいませ。」
少年と少女は微笑み合った。
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