~耐え難く、かけがえのない刻の合間の終わり~

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「なんで……なんでそんなにっ、笑って他人を傷つけられるんですか!!」 「人はね、他人の心に盲目でいるのが一番なのよ。そんなに他ばかり気にかけてちゃ息苦しくて~、身動き取れないじゃない?」 言葉を交わしても……僕と博士の心が繋がる事はないんだと、その時納得した。 「もういいかしら? それじゃ電磁波発生装置を使うんだけど、今の君はまだ触手体としては不完全なの~。融合の割合的には50%かしら? より完全で理想論的な触手体になるには――」 ――つらつらと喋っていた博士の声を遮って、甲高い、乾いた音が僕の鼓膜を震わせた。 音のした方角におのずと視線は向き、そこで僕は、地に伏せたクーちゃんの姿を見つけた。 肩で息をするラングさんに、鬼のような形相で掴みかかろうとするミッちゃん。 でも周りにいる男達に羽交い絞めにされ、ミッちゃんの怒りはその手のように空を切る。 ――何が、あったんだ? クーちゃんは、ミッちゃんは、何をされたんだ? 理解の範疇を超えた光景は、時間の経過と共に変化していく。 ラングさんが感情のままに大声を上げるが、何の事だか分からなかった。 ミッちゃんの言葉は涙混じりで、要領を得ないものばかりだった。 クーちゃんは横たわった身体を、ゆっくりと起こした。 「あららぁ、女の子に手を上げちゃうなんてね~。理想に燃える人って何でも許されるとか勘違いするから、手に負えないわ」 顔を上げたクーちゃんは毅然とした表情をしていて。 何にも揺るがないような強い眼差しのままで。 口を真一文字に引き結んでいて。 そしてその口元から、血を垂らしていた。 ――僕に理性というものがあったなら、この時見事に砕け散ったんだと思う。
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