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「何を言うかと思えば、このツンデレめ」
けれどこのお姫様は、まったくもって分かってくれない。
宇宙船らしい岩のような物の中にいたお姫様とお付きの人達の話によると、ある星と星間条約を取り決めする際、その星の王子様らしい触手のお嫁さんとして、クーちゃんことクチャロ姫(本名は長くて忘れた)が選ばれたらしい。
妊娠のための……その、それをやるにあたり、触手は何かに寄生しないと駄目らしく、その適性のある生物を探そうとしたら、宇宙船の故障で地球に墜落したそうだ。
しかも偶然(僕にしては不運のなにものでもないけど)触手に適性がある者が見つかり、宇宙船が壊れた事もあり、このままこの地球で既成事実を作ろうと考えた。
……まったくもって、笑えない。
僕が寝ていた三日間でクーちゃん達と父さん達との契約は成立し、それから二週間、クーちゃんが僕の家にいるという訳である。
「良いか、よく考えてもみるんじゃ。ワシは茫々の星と条約を結ぶ、例えるならば勢いある上場企業のような星の王女じゃ。ワシの美しさは十の太陽系でも見つけきれんと言われており、まず凛々では会う事すら叶わぬ相手じゃよ。そんなワシの処女を触手有りとはいえ奪えるのじゃ、光栄に思う事はあれど、嘆く必要などないじゃろう?」
「だから、僕はまだそういうのに興味がないんです!」
クーちゃんと距離を開けながら、僕は玄関へとにじり寄る。クーちゃんがまた変な行動をしない内に自室に籠もりたいけど、玄関までは遠い。
「しかし性的好奇心と肉体的欲求がないとは言い切れんじゃろ? 触手の王子も……まぁ自我があるかは分からぬが、凛々の興奮と血に大きく反応するみたいだし、それにワシらの身体的特徴が同じなのも運命と思わぬか? だから欲求に身を委ねてみるが――」
「嫌です! とにかく僕はクーちゃんと、え、エッチな事する気はないんで、もう諦めて帰ってください!!」
急いで走って玄関に辿り着き、靴を脱ぐと二階への階段を上がる。
縁側にいたクーちゃんから何かされると思ったけど、幸いな事に何も無かったので、僕はよろけながらも階段を駆け上がった。
「……それが出来れば、苦労はないんじゃ」
その時小さく呟いたクーちゃんの声は、なぜか耳に残って離れなかった。
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