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「恐れながら凜斗様、これはもう個人的な感情など関係ない事なのでございます。寄生した触手の王子はなぜか貴方から離れようとしないし、無理に離せば命に関わります。本当なら未開拓惑星の住民に見られた場合、その者達は消されるはずなのに、凜斗様が寄生された事によりそれが免れました。貴方には、姫を孕ます以外の選択肢は残されていないんですよ」
「そんな……だって、僕は何もしてないのにっ」
「……姫も、好き者だから頼んでるのではありません。そう決められたから、自分に与えられた命令だから、あの方だって本当は――」
「――よい。それ以上は言うな、ミツキ」
「!! あれっ鍵掛けたのに!?」
ミッちゃんの隣にはいつの間にかクーちゃんがいて、外見に似合わない大人びた視線でミッちゃんを見つめていた。
何だか凄く辛そうな表情に見えて、僕は何となく、顔を背けてしまった。
「お父様が決めた事じゃ。ワシの感情など関係ない、これは母星の為……皆の為なのじゃから」
「……姫」
「クーちゃん……」
……よく考えたら、僕よりクーちゃんの方が辛い立場にいるのかもしれない。
触手のお嫁さんなんて普通に考えても嫌だし、知らない星の知らない男……僕なんかと、そんな事したくないだろうし。
本当なら、自分の星に帰って普通に恋をしたいはずだ。
なのに自分への命令を忠実に守り、この家で、知らない場所で、クーちゃんは――
「あの、クーちゃん?」
二人が黙り込んだので声を掛けてみるけど、返事は返ってこなかった。落ち込んたのではと心配になって、クーちゃんの華奢な肩に手を置こうとした――瞬間。
「ふっふふ捕まえたぞ!!」
………………え?
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