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眼鏡を上げながら、声は冷淡に僕の耳へと入ってくる。
風に乗って漂う桃のようなカイマ博士の匂いに、僕の背筋はまた凍りつく。
「あなたにさっき向けられた物、あれは容器内にある多数の素粒子を撹拌させ、イオンを人工的に発生、超高温化して打ち出されたプラズマ弾よぉ。私達からしたら玩具のような代物だけど、命を奪うには充分……それを防ぐ自信はあるの~?」
「……だからって、クーちゃん達を見捨てるなんてっ」
「あなたの感情云々は聞いてないの、私が伝えるのは――今のままじゃぁ姫様達が死んじゃうって事よ」
「なら、死んでいくのを黙って見てろっていうんですか! 何も出来ないやつは、何もするなっていうんですか……」
僕の声は、きっと涙声になっていただろう。
そんな情けない声しか出せない僕に、カイマ博士は笑いかけてくれた。
でも、なぜだろう――その笑顔から、良い印象は抱けない。
「んん~、そんなに助けたいんなら……良い事教えてあげようかぁ?」
「良い、事ですか?」
「凛斗君が手に持ってるそれ、な~んだ?」
握っているのは、クーちゃんから渡された……いや、そもそも僕に渡すよう頼んだのは……
「これを……僕に電磁波発生装置を渡した意味は何なんですか?」
そこでカイマ博士は笑みを深くしながら、白衣のポケットから何かを取り出した。
僕の目の前に出されたそれは、クーちゃんが見せてくれた水晶の耳飾りとまったく同じだった。
「姫様には内緒で~、発動キーを複製したの。これがあれば、電磁波発生装置を発動させられるわよぉ」
「で、でもこんなの発動しても、何がどうなるって言うんですか!?」
するとカイマ博士は水晶を僕に手渡し、まるで出来の悪い生徒に教え諭すように、楽しげな声で喋りだす。
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