~包み隠さない気持ち~

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カイマ博士の言葉には、僕が王子と融合する明確な理由が含まれていない。 当然納得のできるものじゃないんだけど……今の特殊な状況を考えると、実は理に適った選択なのかもしれない。 「融合すれば……クーちゃん達を助けられるんですね?」 「それは君次第……でも、こうやって見ているだけの現状よりはマシになるはずよ~」 ……カイマ博士の笑顔の奥に隠された真意は分からない、でも僕は、その言葉で決意を固めた。 カイマ博士から鍵である水晶を受けとると、持っている電磁波発生装置が発光を始める。 「水晶をそのまま、装置に埋め込むようにして。そうすれば発動するわぁ……それと、後戻りは出来ないからね?」 楽しげに言うカイマ博士に無言で頷くと、僕は両手に持った二つを近づけた。 数センチの距離になった時、磁石みたいに引き合いが強くなり、触れた瞬間、水晶は装置の中に沈んでいった。 発光は収まり、代わりに耳鳴りのようなものが流れてくる。 いや、響いているといった方が合ってるかもしれない……カイマ博士はいつの間にか消えていて、電磁波発生装置の影響はモロに僕だけが受けているようだ。 音無き音に脳を揺さぶられ、見えない衝撃に視界がぐらつく。 (あ……) ピキリ――と。 まるで孵化寸前の卵にヒビが入ったような音が、僕自身から聞こえた。 身体は手足の先から髪の先まで歪んで、全てが液体になった感覚だった。 『僕』という人間の基礎がバラバラに弾け、そこに感じた事のない新しい『何か』が生まれる。 身体の半分は炎で焼かれ、もう半分は凍り漬けにされたかのような気持ち悪い感覚が続く……頭蓋骨を叩き割ろうとする程の頭痛で意識が朦朧とし、間に合わない警告を僕に知らせ続ける。 と、不意に手足の感覚が無くなった――だけど手足は付いたまんまで、おかしいなと考え、気付いた。 自分の認識できる感覚の機微が、一部分から身体全体へと変わっている事に。 そして、身体の内側で蠢いている『何か』を……今まででは有り得ない感覚を、確かに感じた。 「う、げぇぇぇっっ!?」 地面に手を付き、胃の中にあった全てを吐き出してしまった。 吐いた物の中に赤黒い何かを見つけ、何だか内蔵のように思えて、また吐いた。 胃液すら出なくなってようやく立ち上がると、涙目で前を見据えた。 「助け、るんだ……」 動かす足が本当に足なのかも判然としないまま、僕は駆け出した。
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