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その声は、口ではなく身体の内部から発せられたようで、鼓膜でなく脳に相接意思を伝えていた。
クーちゃんの目が、ミッちゃんの目が、僕の全身を舐め回すように眺める。
それはまるで違いを探すかのようで、今の僕が以前と違っている事に、違和を感じているようだった。
「っ凛々! それは……」
そう言って指差されたのは、まだ握ったままの電磁波発生装置だった。
作動していないのか発熱は収まっており、内部に埋まっていった水晶が表面に浮き上がっている。
触った瞬間、まるで氷細工のような音と共に砕けてしまった。
「うわ、壊れちゃった……カイマ博士に謝らないと」
「カイマじゃと? いや、それよりさっきのは発動キーか? 使い捨ての粗悪品を複製して……発動させたのか」
信じられない、という声色で問うてくるクーちゃん。
電磁波発生装置の危険性は、クーちゃんも重々承知なのだろう。
その声には驚きの他に怒りのような感情も混ざっていた。
そして、なぜそんな事をしたのだという悲しみの感情も……。
「凛々っ……自分が何をしたか、わかってい――」
「大丈夫だから!」
クーちゃんの叫び声に被せるように、僕も大声を上げた。
クーちゃんを助ける為に選んだ事で、そんな悲しい声を、聞きたくない……半ば逃げるような心境で、僕はいまだに暴れるミズヌシへと歩みだす。
「大丈夫、だから。僕がやりたくてやった事だし、意外と何ともなかったからさ」
「しかし先ほどの触手は! 別次元でなく皮膚を突き破って現れていたっ……お主は、人の身を捨ててしまったんじゃぞ!!」
――改めて言われた事実に、少しだけ心が揺れた。
でも僕は、それでも笑って、身体に気合いを入れて、顔に笑顔を浮かべてみせた。
「――――後悔は、ないよ」
「……っこの……馬鹿、たれがっ…………」
鉛のように心へ沈んでいくクーちゃんの言葉に、やっぱり僕は笑顔で応えるしかなかった。
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