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「凛斗様!」
「何をしておるんじゃお主はっ!?」
駆け寄ってくる二人に何とか片手を振ると、クーちゃんから頭を叩かれた。
「い、痛いよクーちゃん」
「お主は死ぬつもりか! 起動しておるか分からんからと言って実際に近づくなど……どこか変なところはないか? 痛いところはどうじゃ?」
全身に針を刺されたような不愉快な痛みはあったけど、それ以外は別に何ともない。
これも王子と融合したからで、そのお陰で僕はミズヌシに近づく手段を思い付く事ができた。
「僕がまたミズヌシに取り付いてハッチを開けるから、クーちゃんはそこから中に入って」
「お主はまた!? あんな目に遭ってもまだ分からんのか!」
「聞いてクーちゃん。確かにさっきは感電したけど、それは準備が足りなかったからだと思うんだ。だから今度は、性質を限りなくゴムやビニールに近い触手を使って、粘液も不純物を取り除いた――純水みたいな粘液を使う」
前に理科の授業で、電流を通さない純水というのがあると教わった。
導体の水から不純物を取り除くと、絶縁体の純水になる……どこまで電流を通さないのか試さないと分からないけど、この身体なら耐えられるはず。
「……理論的には、可能でしょう。触手の生態調査を行った際電流を流す実験もありましたが、触手は理論純水に近い性質の粘液を作り出し、殆ど電流を通さなかったと聞いています。今の凛斗様なら……」
ミッちゃんが僕の意見に賛同してくれたので、あとはクーちゃんだけだ。
「…………」
しかしクーちゃんはしかめっ面で腕を組んだまま、何か不機嫌そうに唸っている。
「これしか方法はないよ。大丈夫、さっきみたいなヘマはしないし、クーちゃんには絶対危ない目に遭わせないから」
「……ワシは危ない目に遭っても仕方のない身じゃ。凛々の話は理解できるところもあるし、ミツキが賛成するのなら安心じゃが……ワシが納得できんのは、そこではない」
クーちゃんはくるりと後ろを向き、表情を隠した。
だからこの時、クーちゃんがどんな顔をして喋ったのか、僕には分からなかった。
「凛々は、いつもワシに優しくしてくれるの……最初のあの時も、じゃからワシは……」
「クーちゃん?」
最初のあの時とは、一体いつの事だろう――それを考えようとしたらクーちゃんがこちらを向き、不敵な笑みを浮かべていた。
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