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「クーちゃん……」
愛おしくなって、たまらず僕はクーちゃんのおでこにキスをした。
触れるくらいの、軽いキス――クーちゃんは最初面食らったような顔をしてたけど、頬を赤く染めながら口を尖らせた。
「むぅ、ワシからやる分には慣れとるが、相手からされると恥ずかしいものがあるの……」
「いつもの僕の気持ち、少しは分かってくれた?」
ほんの少しの、温かな時間……それを打ち砕くように再びの鳴き声が轟き、ミズヌシの動きが完全に停止した。
「凛々!」
「うん!」
クーちゃんの声に返事をすると同時、僕は高く高く跳躍した。
すぐにミズヌシの頭部を越し、着地の際は触手を幾本も出して衝撃を緩和させた。
無事に着地してクーちゃんを下ろすと、クーちゃんは円形に切り込みの入った部分に手を付き、近くにあったパネルのようなものを操作しだした。
「パスワードが変わってなければいいが――よし、開いた! 凛々、あとはもう大丈夫じゃか――」
瞬間、地面が揺れた。僕らのいる地面はミズヌシの頭部で、つまりそれは、活動が再開されたという事で――。
「っクーちゃん!?」
僕が触手でクーちゃんを持ち上げた時、あの時と同じ衝撃が僕の身体を貫いた。
視界を暗転させ、身体を硬直させ、意識を朦朧とさせる二万アンペアの電流――幸いにも触手の性質と粘液によってクーちゃんに電流は届いてないみたいだったけど、代わりに悲痛な声を上げていた。
「凛々っ!?」
「だい、じょぶだ……から」
何とかそれだけを言って、僕はぐちゃぐちゃの意識で必死に考える。
どうする……ハッチはクーちゃんのおかげで開いてる。
後は中にクーちゃんを侵入させるだけだけど、電流をどうにかしないといけない……触手と粘液で電流が防げるのは分かったから、よし。
「凛々、お主何を……」
その声に返事をせず、僕は身体中から更に何本か触手を出して、クーちゃんに巻きつけた。
これは僕も今この場で分かった事だけど、触手の性質を絶縁体に変えられるのは良くて数本。
粘液も絶縁体の触手と一緒に使えば完璧に電流は防げる――だからこそ、それは全てクーちゃんに使わないといけない。
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